Shinichi Kato And Masahiko Sato/シンイチ・カトウ・アンド・マサヒコ・サトウ (加藤真一 & 佐藤允彦) Duet

実にすばらしい作品です。いまや巨匠と呼ぶに相応しい佐藤允彦のおおらかな世界の中で、自由に翔く加藤真一の『創造』への意欲と資質が見事にマッチした作品ではないでしょうか。やはり、ドイツのNAGEL HEYERは頑固な職人気質の『確かさ』を見事に証明した作品。前作が自己との対話であるとすれば、次にこの自作を素材に誰かとの対話を行いたいと加藤が考えたのは想像に難しくありません。ジャズというジャンルに拘束されず、あらゆる音楽に精通し、そして何よりすぐれたインプロバイザー。加藤は迷うことなく、佐藤允彦を指名しました。東京と大阪の2度のライブを経て、加藤の狙いは見事にこの録音に結実する。総じて美しく、明るさを称えた加藤の曲の中で、演奏者は想像力を翔かせ、自由に歌うことが出来る。(2)(3)(7)など緩徐な曲で聴かれる宝石のような佐藤のソロは加藤の楽曲が佐藤の資質に合致して引き出された美しさと言えるでしょう。(1)ではクラシカルなテーマにあの美しいピアノがあればこそ、加藤の変幻自在に遊ぶベースがより衝撃的に効果をなします。また加藤本来のメロディックな歌心と軽快なアルコは(4)(5)(8)などで聴くことが出来ますが、これらの演奏からは2人がジャズという枠からかけ離れた所で音楽を作っていることが明確に理解できるでしょう。一方、ミステリアスなブルースの(10)や、フォー・ビートの(6)を耳にすると、これだけのコラボレーションが聴けるピアノとベースのジャズも、そう多くはないでしょう。聴いて納得のアルバムです。 ジャズ輸入盤CD